約 1,718,653 件
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/8825.html
656 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 09 54 51.76 ID 9+7DAUNJ0 とても下らない報告だけど 伝説の武器を持った勇者とその仲間達ってハンドアウト 伝説の武器は普段は力を封印されていて、ぶっちゃけ覚醒イベントシーン以外は店売りの武器と同じ その辺を説明して主人公をやりたがった人達でじゃんけんして決めてもらったら、落選した人が扱いに差があるとぶーたれた 最初から不平等だと主張してたなら、全員に伝説の武器を配布して全員勇者だとか考えてもよかったけど 自分が落選した途端にクレームつけ始めるのはちょっとイカンよ、それじゃあ相手の譲歩は引き出せないよ それより勇者の役割を食ってしまうくらいの凄いロールに挑戦してみたらどうだい って諭してみたらひとまず収まったけど 勇者役の人に妙な対抗意識を持ってしまったみたいで なんでお前ら一緒に旅してるんだってレベルで勇者に非協力的で、でしゃばりロール 最後に倒したボスの魂が暗黒の力を得て超パワーアップして復活 でも伝説の武器の真の力で即座に消し飛ばされてエンディングみたいなイベントシーンでも 進行を遮って、復活したボスに組みかかると宣言 こっちは「俺が押さえて付けておく、今のうちに俺ごと撃てー!」のノリだと思ったから許可したら 普通に組かかったまま攻撃しようとした。イベントを先に進めようとしたら 「俺ごと殺す気かー! 死んだ後でも恨んでやるぞー! 世界の平和の為にとはいえ仲間を見捨てるのかー!」 雰囲気悪くなってきた中で、勇者役の人が 「この瞬間を逃すわけにはいかないんだ。世界の為にとは言わない、俺の都合で死んでくれ。そして俺を好きなだけ恨んでくれ!」 と熱演して押し切り、困は不機嫌なまま帰っていったが、概ねつつがなく終わった 657 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 10 00 56.35 ID 8aU9l72d0 なんでわざわざ組み付いたんだそいつ…… まあ勇者が卓も一緒に救ったいい勇者でよかった、報告乙 658 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 10 13 39.75 ID RD+rnAMe0 [2/2] 組み付いたのは、その状況で自分以外がボスにとどめをさそうと思ったら 「世界は救ったけど仲間を見捨てやがった奴」の烙印を押せるからじゃないか? しかし死に際までクズすぎる…w 659 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 10 43 47.62 ID b8nvsrIB0 [1/2] 勇者の資質が無かったことを自ら示してしまったのか 660 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 10 46 09.95 ID R93pBGl80 [1/2] 657 真の勇者は卓をも救済するというのか……! 661 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 10 49 15.58 ID VJQ7bbLj0 [1/2] 勇者役GJだな。しかしシステムが気になる。 クズPLの台詞のせいかもしれんが今は懐かしきセブンフォートレスEXの臭いがプンプンするw 662 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 10 53 52.45 ID 0eYaQuXD0 [1/4] 659 確かにw困PLはPCが武器に選ばれなかったことの妥当性を示すRLをしてたんだよ! 663 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 11 33 44.77 ID FLKzesut0 そこまでいくと逆に身体を張ってクズロールしてくれた面白PLだな 664 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 12 18 20.67 ID vAri2KLg0 [1/2] ちゃんと勇者を引き立たせるいいかませじゃないかw 665 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 13 27 31.97 ID vFb6RMur0 [1/2] 和んだ 666 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 13 35 06.00 ID /7uKf4uC0 659 報告乙、勇者プレイヤー氏はうまかったな しかし、「勇者やりたがった人達」って複数形だったけど、 勇者役の人とクズな人の二人でジャンケンだったのか、もうひとり以上いて3人以上の中でジャンケンして ひとりだけ不貞腐れてたのかでクズ度が変わってくるな 667 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 14 23 01.05 ID nIHrEox9P [1/2] 勇者を選ぶ部分もシナリオの一部で、勇者の資質がなく剣に選ばれなかった、までが困PCの設定にあったなら これは実に見事なセッションだったかもしれないw 勇者は選ばれるべくして選ばれたんだな 668 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 15 47 09.74 ID ZBIkyuZi0 そいつが勇者に選ばれてたら、設定とか無視してラストバトル前に 「剣の真の力が解放された!」とか勝手にほざいてボーナス要求しただろうな 669 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/01/29(水) 16 32 01.66 ID +CE4caS20 あんまり想像の翼を広げて「こんなに悪いに違いない」とか言うのはどうなんだろうと思わなくも…… 単に自分のPCでボスを倒すという展開にしたかっただけかもしれませんよ。 普通に考えたらボスに一瞬で殺される役にしかならんけどw まあこの困ったちゃんは行動宣言を許可されたんだから因果応報ですね。 スレ372
https://w.atwiki.jp/dq10f/pages/143.html
冥王強 冥獣王強 Exp2500くらい 特訓30
https://w.atwiki.jp/ngbc/pages/58.html
ボスの分岐条件 ①CPU撃破数 ②バトルボーナス使用回数 ③コンティニュー回数 ④ダブルアサルトを決めた回数 ⑤残り体力合計値 CPU撃破数 バトルボーナス使用回数 コンティニュー回数 DAを決めた回数 残り体力合計値 真獅子王 6体以上 1回以内 1回以内 未使用 無条件 NEO-DIO 6体以上 2回以上 未使用 4回以上 無条件 グッドマン 8体以上 未使用 未使用 6回以上 二人の合計50%以上 どの条件も満たさない場合、ミズチ登場 ※XBLA版 アーケードモードが削除され、PS2版のタッグモードのみ。 よってバトルボーナスも消失し、ボス分岐条件も変化している。 ☆ミズチ ダブルアサルトを決めた回数が2回以下 ☆真獅子王 ダブルアサルトを決めた回数が3回 ☆NEO-DIO ダブルアサルトを決めた回数が4回以上 ☆グッドマン ①ダブルアサルトを決めた回数が6回以上 ②ダウン+タイムオーバーなし ボス攻略 ■ミズチ 遠距離で待っていれば火柱を撃ち始めるので、それに合わせてダッシュし連続技。 ■真獅子王 1、しゃがんでガン待ち→獅子王が中段の蹴りを出してくるので ガードし反撃、蹴り食らうとゴッソリ持っていかれる 2、垂直ジャンプ攻撃の空振りなどで当身を誘い、画面暗転終了したらコンボを入れる 3、投げに比較的掛かりやすいので、TSなどから強引に投げに行く ■NEO-DIO 割と普通に戦ってても倒せる ガード不能のアルティメットビーストと、一部の技への超反応当身に注意 当身取られた後の反撃はTSか、当身で取り返す事も可能 ■グッドマン 炎のムチ振り下ろし>落下飛び道具までセットでやってくるので ムチ振り下ろしを見たらダッシュからコンボ、突進系の必殺技があればより安定
https://w.atwiki.jp/imadokinet/pages/18.html
ニュース * メニュー 佐世保女子高生殺人事件・2ch掲示板に実況書き込み!?
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5849.html
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「………」 ようやく2冊目を読み終えた。かなり遅いペースである。 そもそも、いちいち辞書を参照しながら専門書を読み進む―――という行為に無理があるようにも思う。 (ともあれ、焦る必要もないが……) 1冊目の本を読んでいる時に感じた『強烈な反応』に関しては、少なくともこちらからは絶対にアクションを起こさない、と決定している。『一ヶ月前の反応』も『一週間後の反応』も同様だ。 こんな未知数な存在を相手に、うかつに行動を起こすほど、自分は若くもなければ勇気もないのである。 今まさに調べている『魔法』のように、自分の興味を引く物であればその限りではないが、何せ精神年齢はもう70歳近く。 40年前のように、 (……地球人の凶暴性、ウルトラマン、そしてデビルガンダム……私の汚名を返上するには最高の素材だ……。 クククク……全宇宙に私の才能を示してやる……) このような思考に行き着くのは、少々困難だろう。大体、ハルケギニアの人間に自分の才能を示したところで、あまり大した意味もない。 そもそもこのハルケギニアでは魔法が使えない『平民』の地位がかなり低いらしい。『貴族にあらざれば人にあらず』―――というほど酷くもないようだが、決定的な『壁』のようなものがあるのだ。 (……どうでもいいことだな) 今の制度が続こうが、市民革命が起きようが、異邦人である自分にはあまり関係がない。 ならば自分の趣味に没頭しよう、と本2冊分の知識を元に考察を始める。 (まずは『杖』か) エルフなどが使う『先住魔法』とやらは置いておくとして、魔法の行使には絶対に『杖』が必要とされている。 メイジの『精神力』を外に『出力』するための装置、あるいはメイジが『精神力』を使ってこの『世界』そのものに対して影響を及ぼすための媒介のようなものだろうか。 ……仮に前者だった場合、『魔法』はメイジ自身の力となり、後者だった場合はメイジというより『世界』自体が反応、あるいは呼応していると捉えることも出来るが。 『杖』もまた、その辺の木を切れば良いという物ではなく、数日以上かけて契約したその個人専用のものでなくてはならないらしい。 この行為が『世界』と『メイジ』とを接続するためのものだとすると、後者の方が可能性が高いのではないかと考えられるのだが――― (あくまで『可能性』の話だからな……) あるいは、全く別の要因が絡んでいるのかも知れない。 なかなか興味深い、などと思いつつ、ユーゼスは次のテーマに移る。 (メイジの能力は遺伝される……ふむ) 階級制度が導入されているということは、おそらく長い間メイジ同士で血を交わらせてきたのだろうが、そのメイジと平民が子を成した場合、その子供は魔法を使えるのだろうか? 考えられるパターンとしては、『魔法が普通に使える』、『魔法は使えるが威力は弱くなる』、『魔法が使えない』、『隔世遺伝によって数世代後に発現する』くらいだが、少なくとも自分が読んだ本にはそんな事例は書いていなかった。 本によると、このハルケギニアには6000年も歴史があるのに、そのような例が1件も無いとは不自然すぎる。 (……平民と子を成すことを『家の恥』とでも考えたのだろうか。ならば記録に残すわけはないな) 次に、レベルを上げる条件には、大きな感情のうねりかメイジの修練が必要とされる件について。 ……感情のうねりについては、それこそスーパーモードかハイパーモードのようなものだろう。人間の感情を安易に単純化するのは危険だが、『激しい怒り』や『憎悪』などがキーになるはずだ。……『明鏡止水の境地』に至れば、一体ランクはどうなるのだろう。 よく分からないのは、修練によってレベルが上昇する場合である。 これは、ある日突然にレベルが上がるのか、それとも『そろそろ上がりそうだな』などという手応えのような物と共に上がるのか。 あるいは、その『修練』の果てに至った精神的な境地こそが、レベルを上げるキーなのかも知れないが。 続いて、魔法そのもの―――とは言え、コモンマジックについてしか読んでいないが―――について考える。 『ライト』。そのままストレートなネーミングだ。光を放出する魔法だが、瞬間的に使って敵の眼をくらませる、という使い方も出来るだろう。 『ブレイド』。魔力を刃とする魔法であり、そのメイジが得意とする系統によって刃の色も異なるらしい。ウルトラマンもスペシウム光線のエネルギーを使って八つ裂き光輪やキャッチリングを使っていたので、原理的には同じものかもしれない。 『ディテクト・マジック』。魔法やマジックアイテムを探知するための魔法。応用として、その魔法やマジックアイテムの詳細を分析することも出来るのだとか。 ……かなり大雑把な例えだが、リトマス紙を使って酸性かアルカリ性かを調べたり、ヨウ素液を使ってデンプンを検知するようなものだろうか。しかし詳細を分析するとは……。……自分が使えれば、おそらく乱用しているに違いない。 『サモン・サーヴァント』と、『コントラクト・サーヴァント』。……これらが『コモン』であるということに非常に納得がいかない。 仮にも空間を捻じ曲げる魔法と、ゲートを潜り抜けた生物にクサビを打ち込む魔法なのである。ルイズに至っては時空間まで捻じ曲げ、自分に特殊能力まで付加させたのだ。これが専門的なものでも、高度な魔法でもなく『コモン(共通)』。 ……自分は40年かけてクロスゲート・パラダイム・システムを造り出し、ほとんど生涯を懸けて時空間を超えたのに、『コモン』。 (…………………………) ……深く考えると、めまいや頭痛が起きそうなので、これについては打ち切ることにする。 『ロック』と『アンロック』。………………これに至っては、わけが分からない。鍵の構造など無数にあるはずなのに、それに対して施錠と開錠を行うとは、どういうことだろうか? しかも『アンロック』が効かない鍵もあるという。おそらくこの鍵はマジックアイテムの類ではないか……と推測する(あくまで『推測』である)が、そうするとこの『アンロック』の存在意義とは何なのだろうか。 ―――と、基本的なコモンマジックだけでこれだけの疑問や考察が出て来る。 これがそれぞれの系統魔法にまで及んだら、おそらくとんでもないことになるのだろうな―――などと考えていると、窓の外の空が白んでいるのが見えた。 (……徹夜してしまったな) 研究に没頭して時間を忘れるなど、研究者にとってはよくあることである。 無論、身体に良いわけはないが。 「―――そう言えば」 自分はルイズから洗濯を頼まれていたのだった。 率直に言って、こんなことはやりたくないが、これが務めだと言うのなら仕方がない。 下着や肌着を持ち、ドアを開けて部屋の外に出る。 そこで気付く。 「しまった」 ……洗濯はどこでやれば良いのだろう。 そもそも、この建築物の構造はどうなっているのか。 いや、それ以前に、洗濯とはどうやるのだろう。 「……むう」 途方に暮れるユーゼス。 すると、そこに。 「……あら? たしか、ミス・ヴァリエールの使い魔の……」 ルイズから状況説明を受ける前に、自分にパンを運んで来てくれた黒髪のメイドが現れたのだった。 ちょうど良い。洗濯の場所、およびそこに至るまでの経路を説明してもらおう。 「……すまないが、洗濯する場所を教えてくれ」 「え? どうして使い魔さんが洗濯を?」 「御主人様に命じられたのでな」 あはは、と苦笑しながら部屋の前に置かれた皿とコップを片づけるメイド。 「……えっと、私がやっておきましょうか、お洗濯? 多分、私の方が慣れてると思いますし」 メイドは朗らかに笑いながら、ユーゼスの仕事の肩代わりを買って出る。 ……ここまで邪気のない笑顔を向けられたのは、かなり久し振りである。 (逆にやりにくい相手だな) 敵意や悪意、疑念などを向けられるのに慣れすぎたせいか、このような『見返りを求めない善意』はかえって危険かも知れない。 「……一応、私に与えられた仕事だからな。私が果たさねばなるまい」 「はあ、律儀な方ですねぇ。 そういうわけなら、私が実地も込みで教えてあげます」 そして洗濯物を持って歩くユーゼスとメイド。二人は連れ立って歩きながら、 「ふーん、それじゃ使い魔さんは東方から来たんですか?」 「……それに近い」 正確に言うと『東方』どころではないのだが、東にはクロスゲートが頻出しているようだし、自分は擬似的なクロスゲートから出現したのだから、完全に間違いというわけでもない。ような気がする。 「む?」 ふとメイドの顔を見てみると、そのすぐ下……襟元に光る物があった。 よく見ると、それは……。 「? 使い魔さん、どうしました?」 「……その襟に付けているものは、何だ?」 ユーゼスにとっては、どうにも見覚えのあるマークである。 何せ、かつて自分が地球に赴任した折に、一番最初に所属した組織のマークなのだから。 「これですか? 我が家に伝わるお守りです。何でも、ひいおじいちゃんの故郷では、選ばれた人しかこれを貰えなかったそうですよ」 ……あの組織は何だかんだ言ってもエリート集団だったのだから、当然である。 しかし。 「曽祖父の故郷?」 「はい。60年前に、東の地から空を飛ぶ『銀の方舟』に乗ってやって来た、ってお父さんは言ってました。 でも、『銀の方舟』をもう一度飛ばすことは出来なくって、そのまま村に住み着いてちゃって―――」 「……その『銀の方舟』とやらの、形状や色を教えてもらおう」 「えっとですね、『銀の方舟』ですから、やっぱり銀色で……ああ、先の部分あたりが赤かったですね。形は、こう……丸っこい形をしてるんですけど」 メイドから『銀の方舟』についての情報を聞いたユーゼスは、乗っていた人間やその状況について思考を巡らせる。 (……空間の歪みか、ウルトラゾーンにでも巻き込まれたのか?) このメイドの曽祖父が乗っていた物がユーゼスの推測通りの物だとしたら、アレにワープ機能などないはずである。つまりワープ中の事故ではないことになるが…。 (……いや、待て) こちらに転移してきたシチュエーションは、大体ではあるが察しがつく。 その転移してきた人間とやらの詳細については、これも察しがつく。人格などはどうでもいい。 問題は。 「曽祖父は、お前の村で子を作ったのか?」 「はい。私の髪の色って珍しいでしょ? ひいおじいちゃん譲りらしいです」 「………」 (私の世界の人間と、ハルケギニアの人間で遺伝子交配が出来るだと……!?) ユーゼスは機会があればいずれ試してみようか(『試せる』可能性は限りなく低そうだが)とも思ったが、遺伝子交配については十中八九失敗すると考えていたのである。 極端な話、自分は異次元人のようなものであるし、ハルケギニアの人間と遺伝子配列が極端に似通っている可能性は、限りなく低い。 一条寺 烈こと、宇宙刑事ギャバンは地球人とバード星人の混血であるが、バード星には遺伝子変換のための技術もある。 ……いや、そう言えば『母親は遺伝子変換を行ったのか?』と直接に聞いたことは無かったか……。 仮にギャバンの母親である地球人が、遺伝子変換を行っていないとしたら……。 (……都合が良すぎるな) いくら何でも、そんな訳はないだろう。 ユーゼスは思考をハルケギニアの人間に関するものに戻し、あらためて考える。 (やはり、ハルケギニアは地球の並行世界なのか……) 隣り合っているとまでは言い切れないが、かなり『近い位置』にあるようだ。 (……まあ、私には関係のないことだな) 並行世界だの、時空間の移動だのについては、今まで散々研究してきた。 今はどちらかと言うと、この世界の『魔法』の方が興味深い。 そして何より、今の自分には『洗濯』という困難な使命がある。 メイドの襟に輝く流星のマークを視界に入れながら、ユーゼスは彼女と歩いていくのだった。 「ちょっと待っててくださいね、私の分の洗濯物を持って来ますから」 そう言って、メイドはどこかへと小走りに駆けていった。 待つこと10分ほど。……遠くから、何か布のカタマリのようなものがこちらへと向かって来る。 「………」 「よいしょ、っと」 そこから聞こえるメイドの声。 自分が手に持つ洗濯物の量と、メイドの洗濯物の量を、改めて比べてみる。 (……まあ、いいか) 慣れていない人間に手伝われても、かえって足手まといになるだけである。そのあたりの割り切りは大切だ。 「じゃあ、行きましょうか」 「分かった」 そして洗い場に到着し、メイドの指導を受けながらの、たどたどしい洗濯が始まった。 「あっ、駄目です、まだ十分に濡れてません……!」 「む、そうか?」 「焦っちゃダメです。もっとゆっくり……そうです、やさしく……」 「加減が……難しいな……」 「ああっ! そんなに乱暴にしたら破れちゃいますっ!!」 「……申し訳ない」 「もうっ、けっこうデリケートなんですからね? まあ、経験を積めば、使い魔さんももっと上手になると思いますけど」 「うむ」 「し、しぼる力が強すぎですっ! ちぎっちゃうつもりですか!?」 「いや、そんなつもりは無いのだが」 洗濯終了。……なかなかハードな内容だった。 「それじゃ、私はまだ続きがありますから」 「分かった」 洗濯物を干す場所は教えてもらったので、メイドに教えてもらった通りに干す。……これも、意外にコツが必要だった。 干し終わり、遠目に選択中のメイドを見つつ、ルイズの部屋に戻る。……気が付くと、既に日は昇りきっていた。 ガチャッ ドアを開けると、ちょうどユーゼスの御主人様も目覚めた所だったようだ。 「……ぅあ?」 寝ぼけた様子でこちらを見るルイズ。 「目が覚めたか、御主人様」 「……あ、アンタ、誰?」 「……………御挨拶だな」 ルイズは数度まばたきをすると、『ああ、そう言えば昨日、召喚したんだっけ』と呟いてベッドから起き上がる。 「下着」 「どこにある?」 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってるー」 言われた通りに見てみると、確かに入っていた。 ……どれを持っていけば良いのか分からないので、適当に選んで手渡す。 なお、さすがに下着は自分で替えるらしい。 「服」 椅子にかかっていた制服を無言で持っていき、ブラウスやスカートを着せる。 「顔」 「?」 「……顔を洗うのよ」 「そういうことは前の日の内に言って貰いたい」 「ったく、気の利かない奴ね……」 明日から仕事が一つ増えるな、などと考えるユーゼスに頓着もせず、ルイズは命令を出していく。 「髪を梳きなさい」 「…………言っておくが、私はその方面は素人だぞ」 「別に良いわよ、わたしの髪は質が良いんだから、ちょっとやそっとじゃ絡まったりはしないの。でも少し乱れてるでしょ?」 「まあ、御主人様が良いと言うのなら構わないが」 という訳で、言われた通りに桃色の髪を梳く。 「……じゃあ、食堂に行くわよ」 「分かった」 そうしてルイズと部屋を出ると、ほぼ同じタイミングで真向かいの部屋のドアが開いた。 そこから出て来た赤髪で色黒、長身でスタイルの良い女性がニヤリと笑って、ルイズに挨拶した。 「おはよう。ルイズ」 「……おはよう。キュルケ」 面倒臭そうと言うより、嫌そうな顔でその女性に挨拶をするルイズ。 「あなたの使い魔って、それ?」 女性はユーゼスを指差して、馬鹿にしたような口調で問いかける。 「…………そうよ」 「あっはっは! ほんとに人間なのね! 凄いじゃない!」 (ふむ) 『人間の使い魔』が異常であるということについては、昨日の時点で主人から言われている。 しかし。 (『凄い』、か) よくよく考えてみれば、あの付加機能を差し引いたとしても、自分は『特殊な例』なのである。凄いと言えば、確かに凄い。 (後で使い魔に関する本も読んでみるか) そんなユーゼスの思考などつゆ知らず、女性とルイズの会話は続く。 「『サモン・サーヴァント』で平民を召喚しちゃうなんて、あなたらしいわ。さすがはゼロのルイズ」 「……うるさいわね」 「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」 「あ、そう」 「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ~。フレイムー」 女性が声をかけると、その部屋の奥からのっしのっしと、地球のトラくらいの大きさの、真っ赤な爬虫類と思しき生物が現れ、その生物から熱気が伝わってくる。 (怪獣か) 特に目を見張るものでもないな、とユーゼスは思った。 彼のいた世界では、地球や他の惑星や宇宙などに、ウジャウジャこういう類の生物がいたのである。 切られた尻尾がビチビチ動いたり、火を吐いたり、冷凍ガスのようなものを出したり、光線を吐いたり、その光線を腹から吸収したりする怪獣がいるのだから、今更、熱気を出す程度では全く関心を引かない。 「あら、そっちのあなたは興味なさそうね?」 「……いや、それなりに興味はあるがな」 『通常の使い魔』という面においては、興味を抱いている。 「襲いかかったりはしないのか?」 「平気よ。あたしが命令しない限り、襲ったりしないから。冷静そうな顔してるけど、意外と臆病なのね」 (命令に従うということは、あの『精神制御』は全ての使い魔に共通しているのか) 自分のように『この世界よりの思考』を押し付けるものではないだろうが、それでも『主人の命令を聞く』という方向づけはなされているのだろう。 その後、自分の使い魔の凄さをこれ見よがしにアピールした女性―――『微熱』のキュルケというらしい―――は、ついでとばかりにユーゼスの名前を聞くと、颯爽と去っていった。 「くやしー! なんなのあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって! ああもう!」 (希少価値という面で言えば、『人間の使い魔』の方が高いと思うが) わめくルイズを冷静に見ながらそんなことを思うユーゼスだったが、おそらくルイズにそんなことを言おうと、慰めにもなるまい。むしろ逆効果の可能性もある。 ルイズは『う゛~』と唸って自分を見ると、 「ああもう、メイジの実力を測るには使い魔を見ろって言われているぐらいなのに! なんであのバカ女がサラマンダーで、わたしがこんな平民なのよ!」 今度は、ユーゼスに向かって喚き出した。 「それは私の方が聞きたい」 ユーゼスもユーゼスで、主人と同じ疑問を主人自身に投げかけてみる。 「うっさいわね! ……ああそうだわ、今後、あの女には近付かないようにしなさい。いいわね?」 主人はその疑問を一蹴し、かなり一方的な通告を使い魔に行った。 「理由を尋ねても良いか?」 「……そうね、どうもアンタは理屈で動くタイプみたいだから、ちゃんと説明してあげる」 ルイズ曰く、 ・キュルケはゲルマニアの貴族である。 ・わたしは成り上がりのゲルマニアが大嫌い。 ・実家のヴァリエールの領地はゲルマニアとの国境沿いにあり、逆にキュルケの実家のツェルプストーの領地はトリステインとの国境沿いにある。 ・つまり両国が戦争になったら、真っ先にヴァリエールとツェルプストーの戦いになる。 ・要するに、先祖代々、両家は戦争のたびに殺しあっている関係。 ・加えて先祖代々、婚約者や奥さんを寝取られている。 ・小鳥一匹だって、あの女には取られたくない。 「わかった!?」 「概要はな」 (先祖はあくまで先祖であって、今代には直接的な関係はないのではないか?) そんな考えが頭に浮かぶが、どうもこの世界の『貴族』という人種は、歴史や伝統などを重要視しすぎる傾向にあるようだ。メンタリティの違いという物は、そう簡単に受け入れられるものではあるまい。 ……自分が、地球人を受け入れられなかったように。 それに、この主人の個人的な性格もある。下手な刺激は火に油を注ぐ結果になるだろう。 頭から煙が噴き出しそうな勢いでプリプリ怒りながら、ルイズはユーゼスを連れて食堂へと歩いていくのだった。 (……私の趣味ではないな) トリステイン魔法学院の食堂の内装を見た、ユーゼスの感想はそれだった。 とにかくきらびやかで、派手、豪奢、贅沢、豪華絢爛。 「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」 「ふむ」 「貴族たるべき教育も存分に受けるの。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなければならないのよ」 「ふむ」 「ホントならアンタみたいな平民は、この『アルヴィーズの食堂』には一生入れないのよ。感謝してよね」 「『アルヴィーズ』?」 「小人の名前よ。周りに像がたくさん並んでいるでしょ。夜になるとアレが踊ったりするわ」 「ほう……」 どういう原理で動くのだろう、などとユーゼスがまた思考しようとすると、 「椅子」 思考する間もなくルイズから指示が飛び、ユーゼスは無表情で主人の椅子を引く。 「アンタはそれを食べなさい」 椅子に腰掛けたルイズが指差した先には、床の上にスープが一皿と、パンが二個。 「……………」 「ホントなら、使い魔は外なんだから。アンタはわたしの特別な計らいで、床。感謝しなさい」 「……………感謝しておく」 「よろしい」 凶暴な地球人と傲慢なハルケギニア人、どちらがマシなのだろう……などと考えつつユーゼスは床に座り込む。 「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我らに与えたもうたことを感謝いたします」 唱和の声が、アルヴィーズの食堂に響く。 (ささやか、か) ここでは『ささやか』という言葉の意味が、自分の知っているものとは違うのだろうか、と思ったが、翻訳機能の正確さからすると同じなのだろうと溜息をつく。 そもそも、朝から大きな鳥のローストや、高級そうなワイン、マスの形をしたパイなど、明らかにカロリー多可である。 よく胸焼けや胃が重くなったりしないものだ。 (これもこれで極端だが……) 固いパンをスープでふやかしながら、ユーゼスはこの使い魔生活が早くも嫌になって来たことを自覚していた。 (………かと言って、支配や征服や君臨などをする気力もないし、滅亡させるのも意味がないがな) ゆっくりやっていこう、と改めて思う使い魔であった。 「ああそうだ、昨日は部屋の中にいたけど、今日からアンタも魔法の授業について来なさい」 「? 良いのか?」 魔法に興味がある自分としては願ったり叶ったりであるが、この扱いからすると『授業に出るな』と言われると予想していたのである。 「……使い魔を連れてないせいで、色々と言われるのよ」 「ふむ」 何はともあれ、『魔法の教育』が見られるのはありがたい。 ユーゼスはその内容を期待しつつ、取りあえず今日一日の手始めのエネルギーの摂取を第一に行った。 前ページ次ページラスボスだった使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7699.html
前ページ次ページラスボスだった使い魔 襲い掛かってくる『アインスト』に対して、ニコラの判断は素早かった。 「第一小隊! てえーーーーーーーーっ!!」 号令がかかるや否や、銃兵たちは一斉に怪物たちへと火縄銃を撃ち込んでいく。 しかし……。 「き、効いてない!?」 「……いや、まるっきり効いてないんじゃなく、効き目が薄いんです!」 骨のアインストにはヒビが入ったり、ツタのアインストの触手は千切れかけていたり……と各種類ごとにダメージに多少の差はあるようで、中には銃撃を受けて動きを止めた個体もいる。 だが大部分は銃撃をものともせずに直進し、グラモン中隊へと襲い掛かった。 「うわぁぁああっ!?」 先頭にいるためにアインストの脅威に真っ先にさらされることになるギーシュ。 ハッと横を見てみれば、頼るべき副官はいち早く退避(と言っても数歩分に過ぎないが)していた。 (なんて薄情な!) ……と思ったが、仕方のない判断かも知れないとすぐに思い直す。 役に立ってるんだか立ってないんだかよく分からない貴族の坊ちゃんを庇って、もし死にでもしたら、この150人からなる中隊をマトモに指揮する人間がいなくなってしまうのだ。 ―――「最悪のケースは『上官が無能だった場合』だな」――― ユーゼスもそんなことを言っていた。 何でも、部下が無能な場合は頭をひねればどうにかなることがあるが、上官が無能な場合は逆らうことも下手に出来ないので無駄死にする可能性が高くなるとか何とか。 つまりこの戦場においてはギーシュよりもニコラの方が価値が高いということである。 (うぅ……) ギーシュも薄々とそれに感付いてはいたが、こうズバリと事実を突きつけられればさすがに落ち込んでくる。 ……そうしている間にも『骨』のアインストは腕の先についている黄色い爪を巨大化させ、今まさにギーシュを引き裂き……。 「ぐ……く、くそぉおおっ!!」 (こうなったら、破れかぶれだぁー!!) ギーシュはヤケクソ気味にバラを振って、花びらを五枚ほど宙に舞わせた。 その花びらは一瞬で青銅製の戦乙女へと変化し、まっすぐに異形の白骨へと向かっていく。 「―――ワルキューレぇぇええええっっ!!!」 槍や剣、斧などの武器を持つものや、徒手空拳の青銅ゴーレムが束になって一体の『骨』のアインストとぶつかり合った。 ゴガン、ガキ、めきょ、という音があたりに響く。 「う、うわ……」 激突の結果を見て、ギーシュは思わずうめき声をあげた。 ……おそらくあのアインストとやらと自分が扱う青銅とでは、硬度や強度が根本から違うのだろう。 それなりに重装甲になるように作ったはずなのに、ギーシュのワルキューレは『骨』の爪によって紙細工のように軽々と破壊されていた。 まさに『切り裂かれた』という言葉がふさわしい。 ギーシュの知っているどんな幻獣の爪で攻撃されようとも、ここまでにはなるまい。 あの爪にかかれば人間など、かすっただけでも手足の一本は持って行かれそうだ。 直撃したら確実に命はないだろう。 「……っ」 ギーシュはワルキューレを破壊した異形の怪物の一撃に強い戦慄を覚え、そして、 「ど、どうだ……!?」 その攻撃に晒されずに済んだ『残り四体のワルキューレ』の攻撃の結果を見極めるべく、目を凝らした。 『グゥ、ァアアア……!』 異形の怪物と言えど、その身体の構造自体は人間とそれほどかけ離れているわけではない。 少なくともこの『骨』に関しては、上半身と下半身の区別は何となくつくし、腕と脚は二本ずつ、ちゃんと歩行もすれば頭部もある。 ……変にトゲトゲしくて尻尾までついているが、そこは目をつぶるとして。 ともあれ主な攻撃手段と思しき『腕の先の爪』も、結局は右腕と左腕の二つしかない。 つまりどんなに頑張っても、一度に攻撃が出来るのは二体までが限度のはず。 「……………」 まあギーシュも一瞬でそこまで考えてワルキューレ五体がかりで仕掛けたわけではないのだが、いずれにせよ結果だけ見ればベターな判断だったと言えるだろう。 なお、その『残り四体のワルキューレ』の攻撃の結果はと言うと。 まず剣を持ったワルキューレが『骨』の頭部に切り込んでいたが、これは多少頭部を欠けさせただけで終わっていた。 次に斧を持ったワルキューレはちょうど肩口の『骨の継ぎ目』のあたりに刃を食い込ませつつも、しかしわずかにヒビを走らせるだけの結果に留まっている。 続いて徒手空拳のワルキューレがギーシュ最大の攻撃力を誇る『ディスタント・クラッシャー』を放ち、胸の骨盤にマトモに当てていたが、ほんの少し骨盤が割れるだけで逆に仕掛けたワルキューレの手がひしゃげる始末。 最後のワルキューレはその手に持った槍で、 「お……おお?」 『骨』、『ツタ』、『鎧』、『魚』の四種類全てのアインストに共通している部位……腹部の赤い光球を刺し貫いていた。 『グ、ガ……ァァ、……ァ……』 パラパラパラ、とその身体を灰化させていく『骨』のアインスト。 そしてワルキューレが光球から槍を引き抜くと、『骨』は全身を完全に灰化させてザラザラと崩れていった。 「や、やったのか……?」 ギーシュはおっかなびっくりと言った様子でワルキューレを操作し、その武器を使ってアインストの残骸である灰を突つかせる。 「……………」 何も起こらない。 どうやら本当に倒したようだ。 (……やった!) ギーシュの心に達成感や喜びが湧き上がってきた。 正体はよく分からないが、とにかくこの謎の怪物を自分一人でやっつけたのである。 (やった、やった、やったぁ!!) 今の結果からすると、ワルキューレが貫いたあの赤い光球は弱点だったらしい。 そう言えば最初の射撃で動きを止めた一部のアインストも、腹部の光球に銃弾を受けていたような気がする。 偶然とは言え、それを的確に突いて敵を仕留めるとは……。 (やった! やれた! やってやったぞぉぉ!!) そう、自分はやれば出来る子なのだ。普段はやらないだけで。 自分が成したこの成果を目にして、後方にいる部下たちもさぞかし勇気づけられたことだろう。 「中隊長殿、中隊長殿ー!!」 「おお、何だいニコラ君?」 副官が声を張り上げて、必死に自分を呼んでいる。 はっはっは、そんな賞賛や喝采を受けるほどじゃないよ。 さあ、君は安心して部隊の指揮をしてくれたまえ。 ……そうしてギーシュは副官および自分が率いる中隊員たちに向かって手でも振ろうとして、 「早く! 早くこっちに逃げてきてくださいー!!」 「え?」 あまりにもニコラが一生懸命に叫んでいるものだから『何かあるのかな』と周りを見渡し、 「―――って、うわぁぁああああ!!?」 自分のすぐ後方にまで迫っていた大量のアインストの群れに、ようやく気付くのだった。 「う……っ、う、うぉっ、うぉぉおおぉおおおぉぉぉおおおおぉおっっ!!!!」 全力疾走で一目散に逃げ出すギーシュ。 せめてもの盾になってくれれば、と残っていた四体のワルキューレを自分とアインストとの間に配置するが、ハッキリ言って何の慰めにもならないことは他でもないギーシュ自身が一番よく分かっていた。 『グゥゥゥウウ……!』 『骨』のアインストの何体かがうなりをあげ、それと同時に彼らの頭と肩についている黄色いツノのような突起物が光を放つ。 そしてその突起物自体が意思を持っているかのようにブルリと震えたかと思うと、黄色い突起物は『骨』のアインストから分離してギーシュに襲い掛かった。 「げぇええっ!?」 仰天するギーシュ。 ここに来て飛び道具というか、遠距離攻撃を使ってくるなんて。 しかも一発や二発ならまだいいが、肩やら頭やらに『いくつかある』ツノみたいなものから、更に『何体かが』その攻撃を使ってきた。 「うわわわわわわわわわぁっ!!?」 十個前後の黄色い脅威がギーシュへと向かう。 一応ワルキューレ四体を使ってその『ツノを飛ばす攻撃』を防げないものかと抵抗してはみたが、ある意味で予想通りにバリバリッとワルキューレは砕け散ってしまった。 何ともまあ、ものの見事な全滅である。 取りあえずギーシュに向かってくるスピードがいくらか鈍りはしたが、全滅は全滅だ。 「ぐぐぐっ……!」 悔しさや悲しさを感じる暇もありはしない。 (そんな攻撃、さっきは使わなかったじゃないかぁぁ!!!) 迫り来る危機に対して、心の中で精一杯の文句を叫ぶギーシュ。 ……実はズルいどころか最初の段階でこの攻撃を使われていたら確実にギーシュは殺されていたのだが、そんな幸運に感謝する余裕もなかった。 今のギーシュにあるのは、ただ『逃げる』という一念のみだ。 (で、でも……逃げるったって、もう……!) たとえギーシュが人生最高の脚力を発揮してこの場を駆け抜けようと、すぐ後ろまで迫った飛来物は容赦なくギーシュに追いつくだろう。 人間の最高速度ではどんなに頑張っても、あの飛来物と競争して勝つことは出来まい。 つまり、ギーシュは逃げられない。 (に、逃げられない……?) ―――「……他のメイジはともかく、お前ならば割とスムーズに逃げられるだろうな」――― ―――「はあ? 何でそうなるんだね」――― ―――「『何でそうなる』は私のセリフだ。お前は自分の手持ちの戦力を忘れているぞ」――― ―――「手持ちの戦力、って……」――― 「……っ!!」 ユーゼス・ゴッツォによる『戦場に出る前の軽いレクチャー』での一つのやり取りが、瞬間的に思い起こされる。 今の状況で、ギーシュはこの攻撃から逃げることが出来ない。 そう、“ギーシュ一人だけでは”この攻撃から逃げることは出来ない。 そして“手持ちの戦力”。 「ああっ、クソッ!!」 もうこうなったらイチかバチかだ。 どうせこれが失敗すれば死ぬのである。 だったら、自分が誰よりも信頼している『彼』に任せよう。 「ぬぉぁぁあああっっ!!!」 ギーシュは全力疾走しながら、一瞬だけ不規則なリズムで足踏みをする。 ダダンッ、ダンッ。 いきなり突飛な動きをさせたせいで脚の筋肉にかなり負担がかかったが、命には代えられない。 そしてギーシュが更なる一歩を踏み出そうとすると同時に、その踏み締める予定の石畳にビキリと亀裂が走り、 「う……おっ!?」 そのヒビの入った石畳に足を置いた途端、石畳とその下の地面は崩壊し、ギーシュの身体はアルビオンの大地へと消えていったのだった。 唖然としたのは、その光景を最初から最後まで見ていた副官のニコラやグラモン中隊の面々である。 ―――中隊長を置いて逃げてしまったのは、さすがに申し訳ないとは思った。 だが、隊長1人が取りあえず生き延びることと隊員150人が浮き足立ってやられてしまう危険とを天秤にかけてしまえば、どうしても後者を選ばざるを得なかった。 若い者が死ぬ場面など見たいわけはない。 それでも、戦場においてこういう判断が出来る人間は必要なのである。 そのようにして覚悟を決めていたニコラだったが、結果としてギーシュは一体のアインストを打ち破った。 これは色々な意味で幸運だ。 アインストを倒せたギーシュはもちろん幸運だし、アインストの弱点があの光球だと知ることの出来たニコラも幸運と言っていい。 どんな人知を超えたバケモノだろうと、明確な弱点さえ判明してしまえば攻略法が見えてくるものなのだ。 ……だと思ったら、今度はギーシュが一目散にこっちに逃げてきて、ついでにアインストも引き連れて来た。 まあ、これは仕方ない。 誰だって死にたくはないし、あんなバケモノと正面きって戦うのはあの少年には荷が重過ぎる。 それにどの道、奴らへの対処はしなければならなかったのだから、それが早いか遅いかだけの違いだ。 ニコラは逃げ惑う中隊長を援護すべく小隊に銃を構えさせていたが、迫るアインスト、走るギーシュ、待ち構える自分たちという位置関係である以上、下手に銃を撃ったらギーシュに当たってしまう可能性があったため、迂闊に援護も出来なかった。 そして『骨』のアインストが飛び道具を使い……。 (これは死んだな、あの坊ちゃん) と、その時のニコラは本気で思った。 ギーシュも頑張って走ってはいるが、頑張ろうが何をしようが無理なものは無理だ。 ニコラは諦めと悔しさと冷静さと怒りを内心でごちゃ混ぜにしながら、中隊長が倒れた時を見計らって号令を下そうとして、次の瞬間。 その中隊長の姿が消えた。 「……!!??」 そう、『死んだ』とか『バラバラに引き裂かれた』とかではなく、『消えた』のだ。 まるで地面に吸い込まれるように……と言うか地面の中に落ちていくように見えたが、一体どういうことなのだろう。 ……と、悠長に中隊長の安否を考えている場合ではない、とニコラの中の非情な部分が警告を発する。 今の自分の仕事は、あくまでこの正体不明の怪物への対処だ。 不可解な現象の分析など、事態が落ち着いてから専門家のメイジにでも任せればいい。 ニコラは敵の放った『ツノ』がギーシュのいた空間を通り過ぎ、地面に突き刺さったり見当違いの方向に飛んで行ったのを確認する。 どうやらあの『ツノを飛ばす攻撃』は有効射程がそれほど長いわけではないようだ。 そうしてひとまずの安全を認めたニコラは、銃兵たちに指示を飛ばした。 「第二小隊! 敵の腹にある赤い玉を狙え!! ……てえーーーーーーーーっ!!」 30人の銃兵が、接近しつつあるアインストの弱点に銃弾を叩き込む。 『グッ、ゴッ、ォオ……オォォォ……!』 さすがに30発全てが光球に命中はしなかったが、それでも前面に出ていた『骨』のアインスト数体が灰となって崩壊していく。 「……よし」 この要領で行けば、あの怪物たちも何とかなるはず。 能力や特徴などが判明しているのがまだ『骨』の一種類だけだというのが少し気にかかりはするが、これは手探りでやっていくしかないだろう。 あるいは自分たちと同様にアインストに対処しているアルビオン軍の様子を観察する、というのも一つの手だ。 とは言え、その方法を取るためには『安全に身を隠せる場所』が必要であり、アインストがそこかしこに跳梁跋扈している今のシティオブサウスゴータでそんな場所を見つけるのは困難と言える。 さてどうしたものか……とニコラは頭をひねりつつ、取りあえず各小隊にいつでも銃が撃てるよう準備させた。 その時。 ボコッ! いきなり自分のすぐ隣の地面が、石畳ごと盛り上がる。 「うぉっ!?」 その石畳と土を掻き分けて……。 「…………あー、死ぬかと思った」 「モグモグ」 先程いきなり消えたはずの中隊長ギーシュ・ド・グラモンが、その使い魔のジャイアントモールと共に姿を現した。 パッパッと髪や服についた土を払いながら、ギーシュは穴から這い出る。 そして穴の中からひょっこりと顔を出しているモグラを抱きしめると、感激した様子でそのモグラに話しかけた。 「ああ、ヴェルダンデ! 今日ほど君が僕の使い魔でよかったと思う日はないよ!! あれほど的確に主人の意図を読んで、しかも迅速に救出してくれる使い魔が君の他にいるだろうか!? いや、いるわけがない!! 君は最高だぁ!!!」 「モグ!」 ひしっと抱き合う主人と使い魔。 モグラと熱い抱擁を交わす少年、という絵面はなかなかに『来る』ものがあるが、しかし引いている場合ではない。 「……中隊長殿。取りあえず状況説明をお願いしたいんですが」 やや放心気味のニコラがギーシュにそう言うと、ギーシュはフフンと得意げな様子で自分が取った行動について説明する。 「なあに、窮地に陥った僕はとっさの判断でヴェルダンデに穴を掘ってもらい、地下に避難。そのまま地面を掘り進んで君の隣へと進んだ……と、まあこういうワケさ」 キザったらしく髪をかき上げるギーシュと、そのすぐ横で同じような仕草をするヴェルダンデ。 「はあ」 副官としては、何と言うか呆気に取られるしかなかった。 生きていてくれたことは嬉しいのだが、ピンチになったかと思ったら助かってそれから更にまた死にそうになったり……と、この少年は見ていて心臓に悪すぎる。 これがいわゆる『悪運が強い』というやつだろうか。 「……まあ、ともかく」 生きてて良かったと心の底から喜ぶのは、この戦場を切り抜けてからの話である。 今はそれよりもアインストだ。 「……………」 ニコラはアゴに手を当ててヴェルダンデを見つめた後、ギーシュに質問した。 「中隊長殿、そのモグラはどのくらい土を掘れるんですかい?」 「え? どのくらい、って言うと……」 「掘り進む速度とか、掘り続けられる体力はどれくらいとか、そう言うのです」 「おお、聞きたいのかね!」 するとギーシュは得意げに自分の使い魔の能力を語り始める。 「まず速度についてだが、これは自信がある! 何せ、人を乗せた馬が走るのとそう変わらない速度を出せたりするからな! まあ、さすがに全力で飛ばされたら遅れるけど!」 「モグモグ」 「ほう……」 「体力についても問題なしだ! やったことはないが、多分やろうと思えば50リーグくらいはぶっ通しで軽く掘り進められるはずさ!」 「モグ!」 「なるほど」 「更に地面を掘ることももちろんだが、ヴェルダンデの最大の能力はその鼻でね。貴重な鉱石や宝石なんかを僕のために見つけてきてくれるのさ! 何たってユーゼスにも『優秀だな』って言われるほどの―――」 「ああ、いや、取りあえずその辺で」 この調子でいくと永遠に喋り続けそうだったので、ニコラはギーシュの話をやや強引に止める。 取りあえず聞きたい情報は得ることが出来た。 あとは……。 「中隊長殿、お願いがあるんですが」 「何だい」 「そのモグラで、地面を掘り返してもらえませんかね?」 「は?」 間抜けな声を出してしまうギーシュ。 「ええと……『逃げるために地下に通路を掘る』とかじゃなくて、『地面を掘り返せ』と?」 「その通りでさ。まあ逃げるんだったらその時もお願いするとは思いますが、今は取りあえず……こう、格子って言いますか……ハシゴみたいにして、地面にタテとヨコのミゾを作ってください」 「……もしかして『壕を作れ』って言ってるのか?」 「理解が早いですな」 「……………」 ニコラの要求にギーシュは困惑した。 確かに身を隠す場所は必要だとは思うが、何も壕を作る必要まであるのか。 ……まあ、素人に毛が生えた程度の軍事知識と経験しかない自分よりは、ニコラの方が数十倍は信用出来るのだけれども。 それ以前の問題として、 「…………こんな街のど真ん中に、そんなデコボコした壕なんて作っちゃっていいのかなぁ」 壕を作るということは、石畳を引っぺがすなり壊すなりして地面を掘り返すということである。 いずれ自分たちの拠点として使うつもりの街に、そんなことしてしまっていいんだろうか。 「あとでお偉いさん怒られるのと、今の危険を少しでも回避するのと、どっちがいいかって話ですよ。……ところでやるんなら早くお願いします。こうして話をしてるのも、実は結構ギリギリなんで」 「えっ?」 ニコラが指差した先を見ると、三つある鉄砲小隊が迫り来るアインストに向かってそれぞれ交代で銃撃を行い、その侵攻を辛うじて食い止めている光景が広がっていた。 今の所こちらに向かってきているのは『骨』と『鎧』の二種類だけ。 だが、もしアルビオン軍と交戦している『ツタ』や『魚』が加われば……。 (……!!) 青銅製の自分のワルキューレですら、アッサリとバラバラにされてしまったアインストだ。 それよりも脆弱な人間の身体など、砂の城を崩すようにして壊してしまうに違いない。 「わ、分かった。壕を掘ろう!」 「お願いします」 そうしてギーシュはまずバラの造花を振り、ヴェルダンデの負担を減らすために街道の石畳に向かって『錬金』をかけ、石を砂に変える。 「イル・アース・デル!」 『石』はそもそもの成り立ちが『砂』や『泥』や『粘土』が固まって出来たものなので、材質的にはかなり近い。単なる形状変化と表現してもあながち間違いではないだろう(『石』という物質について細かく定義するとまた異なってくるが)。 よって『錬金』の難易度も相当低い。 ……しかし150人が収容出来るほどの面積分の石畳に『錬金』をかけるのは、既にワルキューレ五体分の精神力を消費していたギーシュには骨だった。 「くっ……」 ほとんど限界ギリギリまで精神力を使って、ギーシュの目に映る内、六割ほどの石畳は砂と化す。 あとは、 「ヴェルダンデ、後は頼んだ!!」 「モグッ!」 ズドドドド、と物凄い勢いで土を掻き分け、地面を掘り進んでいくヴェルダンデ。 ヴェルダンデはまず街道の左右の端にそれぞれ土の通路を作り、次にその左右の土の通路を繋げる通路を橋を渡すようにしていくつも作り上げた。 途中、何度か地中にある『赤紫色の結晶』に引っ掛かりはしたものの、作業を遂行することにはさして問題はなかったようである。 そしてシティオブサウスゴータの街道はあっという間にハシゴ状の壕と化し、その壕の中にはグラモン中隊の面々が入り込んでいく。 と、そこでギーシュがニコラに質問した。 「ところで軍曹、どうしてハシゴ状なんだ? 一気に大きいものを作ればいいと思うんだけど」 「さすがに地面を丸ごと全部ひっくり返すってワケにはいきませんからね。しかしウチの中隊は人数が150人もいることですし、そう簡単に全員を収容は出来ない。だったら何列も作りゃあいいんじゃないか……と考えまして。 何列もありますから、時間差の一斉射とかも可能でしょうしね」 「なるほど……」 「それに両脇に通路もありますし、イザとなったらここから後方へ退避も出来ます」 「ふぅむ」 あのバケモノどもを相手にどこまで通用するのかは分からないが、なかなか考えられている。 まあ何にせよ今のところは壕の中に身を隠し、こちらに来るアインストを迎撃しながら、アルビオン軍とアインストとの戦いの様子を観察しなくてはならない。 『アインスト』という名称を付けていたことからして、どうも連中との戦いのキャリアはアルビオン軍に分があるようだ。 よって、その対処法も少しは確立されているはず。 というわけでギーシュはニコラと一緒に壕の中からひょいっと顔を出してアルビオン軍とアインストとの戦いを観察し、得た情報をまとめていった。 まず『鎧』は飛び道具の類は全く持ち合わせていないようで、攻撃手段は体当たりと、近付いて殴ることと、あとは……。 「……か、身体がバラバラになってオーク鬼に襲いかかっていったぞ」 「そうなったせいで弱点の『赤い光球』も露出してますけどね」 何とも捨て身な攻撃手段だ。 だがバラバラになった鎧が再結合し、その再結合に強引に巻き込まれる形で押し潰されたオーク鬼も悲惨だった。 圧殺と言うか、轢殺と言うか。 とにかく自分だったら絶対に嫌な殺され方だ。 「次は『ツタ』か」 こいつはその見た目とアダ名どおりにツタを伸ばして敵に打ちつけ、甲冑のような殻のスキマから結構な威力の光線を放出していた。 その威力の程はと言うと、 「うっ、光線を受けたオグル鬼がバラバラになってる……」 「ふぅむ。確かにあの光線は危険ですが、接近戦用に使ってるあのツタじゃ多少傷つく程度でどうにかならないことはないみたいですな。それに光線を撃つのにオグル鬼をわざわざ投げ飛ばしてましたし……近接戦闘だとあの光線は撃てないのかな、こいつは」 「……冷静だなぁ、軍曹」 「生き残るのに必死ってだけですよ」 ニコラはそう言った直後に中隊へと指示を飛ばし、こちらに向かって来るアインストを一斉射撃で押し留めさせる。 そんな副官の働きぶりに、ギーシュはただ感心するばかりだった。 「え、えーと、最後に残ったのは『魚』だな」 とは言え中隊長としての面目もあるので、感心してばかりもいられない。 今の自分にも出来るせめてものこととして、あのバケモノどもの情報収集くらいはこなさなくては。 などと思っていたギーシュだったが……。 「何だ、アレ?」 『魚』のアインストがふよふよ~と浮かんでいるのはいい。浮いてるだけならバグベアーだって似たようなもんだ。 そいつが『ツタ』と同じく、甲冑みたいな殻から電撃を放つのも大目に見よう。今更そのくらいで驚きはしない。 で、その電撃でトロル鬼が黒コゲになったことも……この際だ、よしとする。ユーゼスだってワルドの『ライトニング・クラウド』を受けて腕が焦げてたし。 問題は。 「アレは……銃、なのか?」 その『魚』のアインストに対してアルビオン軍が使っている兵器である。 車輪がつけられた台座の上に置かれている、金属製の筒。 最初は大砲かと思ったが、大砲にしては細すぎた。 強いて近い形を挙げるとするなら『銃』になってしまう。 その『銃らしきもの』から発射される何十発もの弾丸は、圧倒的な勢いで『魚』の殻を欠けさせ、光球をえぐっていく。 ―――仮に自分たちの銃小隊が一斉に集中砲火を浴びせたらこうなるだろうな、というような光景だった。 また当然の結果として、蜂の巣にされたアインストは活動を停止し、白い灰となっていく。 「す、凄いと言うか……凄まじいな、あの銃……」 「…………あの銃口が自分たちに向いてなくてよかったですな」 驚愕しつつ『銃らしきもの』についての感想を口にするギーシュとニコラ。 一見したところ、あの銃撃はトライアングルかスクウェアスペル相当の威力がある。 しかし、そんな性能の銃など二人は見たことも聞いたこともない。 ギーシュもユーゼスからジェットビートルに搭載されている機銃について聞いてはいたが、実際にその威力を目の当たりにしたわけではないので、やはりかなりの衝撃を受けていた。 百聞は一見にしかず、というやつである。 「―――忘れてたけど、僕たちってアインストの他にアルビオン軍も相手にしなくちゃいけないんだよな」 「『ついさっきまで殺し合いしてた連中が、とっさの判断で手を組んで共通の敵に対処する』ってのも無理がありますしねぇ」 「仮に対処したとしても、終わったらまた殺し合うワケだから……」 「何だか今のトリステインとゲルマニアにも同じことが言えるような気がしますが」 「…………。取りあえず今は、そういう話は後にしよう」 「そうですな」 隣同士でしょっちゅう戦争しているトリステインとゲルマニアが今は連合軍を編成しているという事実を考えてみると、なかなか深い話ではある。 だが、今は戦闘中なのだ。 ギーシュは頭をブンブンと振り、ニコラは意識的に一度だけまばたきをして余計な考えを頭から追い出し、二人同時に壕の中へ頭を引っ込めると、取りあえずの対策を講じ始めた。 「まあ、あの銃にせよ『魚』のバケモノにせよ、弱点が全く見つからないってワケじゃありません」 「そうなのか?」 「取りあえずではありますがね。……まず『魚』の方ですが、こっちはあの電撃を撃つ前と後に“溜め”と言うか、隙が出来ます。そこを突きましょう」 「“溜め”?」 「連続で撃てないって意味です。火竜なんかもブレスをずっと吐き続けることは出来ませんし、それと同じような理屈じゃないですかね?」 そういうものか、ニコラの言葉に頷くギーシュ。 そしてニコラは残った最後の敵の弱点を語った。 「あの銃もそれと同じです。確かにあれだけの威力を連射し続けられるってのは脅威ですが、それにしたってずっと撃ち続けられるわけじゃあない。いつかは弾切れになります」 「……『いつかは』、って言われてもなぁ」 何ともあやふやな言い方だった。 その『いつか』とやらは、一体いつごろ来てくれるのだろうか。 「なあに、火縄銃みたいにありふれたものってワケでもないようですから、数も揃ってないでしょう。もし揃ってたら、もっと前面に出てくるはずですし……隙を突くのは割と簡単だと思いますよ」 「うーむ……」 何だかどれもこれも『敵の隙や弱点を突く』ものばっかりで『真正面から打ち破る』みたいな戦法がないのが気になるが……。 この際だ、贅沢は言うまい。 いや、そもそも贅沢を言える立場でもない。 「…………よぉし」 この状況で今の自分に何が出来るのかは分からない。 しかし何かをせずにはいられないので、ギーシュはその『何か』を見つけてくれるニコラへとそれを尋ねる。 するとニコラは笑みを浮かべ、ヴェルダンデを控えさせておくように言ってきた。 どうやらギーシュの使い魔を駆使して何かをするつもりのようだ。 「さて中隊長殿、これから忙しくなりますぜ」 ふと東の方に目をやれば、すでに空は白み始めている。 これから太陽が昇って見通しがよくなれば、戦いはますます苛烈さを増すだろう。 「だ、大丈夫だ! 何たって、僕とヴェルダンデのコンビは無敵だからな!!」 「モグ!」 ギーシュはわざと大声を張り上げつつも、これからすぐに起こるであろう激戦の予感に身震いするのだった。 前ページ次ページラスボスだった使い魔
https://w.atwiki.jp/karamiro/pages/80.html
正式名称はカラオケ板@2ch掲示板 これからみんながお世話?になるであろうここの板。歌うpお待ちしています 新規は半年ROMれ。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5834.html
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ペラ。 ルイズの就寝より、1時間ほど経過した頃。 ペラ。 ユーゼスは、辞書と魔法の学術書とで何度も視線を往復させつつ、その内容を読み取っていく。 ペラ。 (魔法を使用するには媒体として『杖』が必須である。『杖』を使用せずに放たれる魔法は、エルフや妖魔などが扱う『先住魔法』であり、その威力・効果はメイジの使う魔法の比ではない) ペラ。 (五大系統―――火、水、風、土、失われた系統である虚無。 虚無は始祖ブリミルが使った系統とされているが、始祖以外に扱った者は確認できず、あくまで伝説とされ、実質は四大系統である) ペラ。 (コモンマジック。ごく簡易的、かつ基本的な魔法。いずれの系統のメイジであっても等しく使えるため、いずれの系統にも属さない) ペラ。 (メイジの能力は遺伝によって伝承される。平民が魔法を使えないのは、そもそも根本の血統が異なるからである) ペラ。 (一概には言えないが、メイジの実力はおおむね『系統を足せる数』によって決まる。ドット、ライン、トライアングル、スクウェアの四段階。系統を足すことによって、より強力な魔法となる。五段階目以降は存在しないが、王家のみに扱える『ヘキサゴン・スペル』が伝えられている。 なお、メイジの実力によっては『トライアングル』が『スクウェア』を、『ドット』が『ライン』を上回る可能性もある。二段階以上ランクが離れている場合、それを覆すのは非常に困難である) ペラ。 (ランクを上げる条件は、個々人によって差はあるが、一般的には大きな感情のうねり、またはメイジの修練が必要とされる。 ランクは一段階ずつ、ある程度の時間をかけて上昇するものであり、一度に二段階以上ランクが上昇することは、まず無い) ペラ。 (魔法の使用には、メイジ本人の『精神力』を消費する。これはレベルが上がるごとに増大するものではなく、今まで使用し ていた魔法の精神力の消費量が半減する仕組みである。 使用する魔法によって多少の差はあるが、基本的に消費する精神力はドットスペル:ラインスペル:トライアングルスペル:スクウェアスペルの比率で表すと1:2:4:8。一つランクが上がるごとに、自乗式に増大する) ペラ。 (精神力を限界まで使用すると、メイジの意識は失われる。これを回復するには、十分な睡眠を摂取する必要がある。一日眠れば全てが回復するわけではなく、例えば金の『錬金』のためのスクウェアスペルは一ヶ月分の精神力を必要とする) ペラ。 (同時に複数の魔法を行使することは出来ない。これはドットでもスクウェアでも共通している) 「…………ふむ、水を蓄えたタンクに対して、『放水量』や『水の質』、『放水パターン』、『放水させた後の形状』などはある程度の操作が出来るが、『蛇口』は一人に一つだけということだろうか」 基本的な前提条件を読み進むだけで、かなり苦労する。 今日だけで本棚の一列くらいは読みたかったが、これでは2冊か3冊がいいところだ。 やはり単語や文章の基本だけでこのような長文を読み解くのは、少々無理があったか。 だからと言って、読むことを止める理由にはならない。 深く考察するのは後にするとして、まずは知識を溜め込むことに専念する。 ……欲求と好奇心の赴くまま、とにかく本を読む。 それでは次のページをめくろう、とユーゼスはページに手をかける。 (!!?) ドサッ その時、突然、脳内にナノチップとして埋め込んであるクロスゲート・パラダイム・システムが強烈な反応を伝え、驚いて思わず本を落としてしまう。 「……何だ!?」 かなり大規模なゲート……いや、クロスゲートに近い物が開かれた反応である。 しかも、そこから現れた存在―――通常であれば『出て来たモノ』の詳細については感知など出来ないのだが―――は、自分を含めたこの世界全体の因果律に絡みつき、歪ませ、破壊しかねない、とシステムが最大限の警告を送ってくる。 「馬鹿な……」 帝王ゴッドネロス、大帝王クビライ、異次元人ヤプール、そしてラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォなどとは比べ物にならない。……これだけ強力な存在など、少なくとも自分のいる世界にはいなかった。 超神形態の自分ですら、これに比べれば『小物』と言えるだろう。 (……逃げるか?) 即座にこの世界からの逃亡を考える。まともに戦って―――策を弄して戦ったとしても、勝てる可能性は極めて薄い。自分なら死んでもまた因果地平の彼方に戻るだけかも知れないが、下手をすると『存在』自体が抹消されかねないかも知れない。 (……いや、別の世界に逃げたとしても、追いかけて来る可能性もあるな……) 因果律に干渉できるということは、次元の壁を破る方法を知っているということでもある。 つまり、どれだけ逃げても無駄かも知れないのだ。 「…………どうする…………!?」 もはや魔法の知識などそっちのけで、この強力無比な存在にどう対処すれば良いのか、ということに混乱しつつも頭脳をフル回転させるユーゼス・ゴッツォ。 しかし。 「…………………………む?」 パニックに陥りかけていると、その『謎の存在』の因果律への干渉が消えてしまった。 (???) 一瞬で。綺麗さっぱり。跡形もなく―――いや、跡形(アトカタ)というか形跡(ケイセキ)くらいはあるが。 「………何だったのだ?」 ―――たまたまそのような『超存在』が、どこかの世界へと向かう途中でフラリと立ち寄った………などと考えるが、そんな確率は何兆分の一だろうか。 大まかな出現地点くらいは分かるし、直接、転移して調べてみようかとも思ったが、地球の言葉には『触らぬ神に祟りなし』とか『薮をつついて蛇を出す』というものもあると言う。 「……うぅむ」 もしかすると、自分はとんでもない世界に呼ばれたのかも知れない―――などと考えながら先程のクロスゲートの探知を行っていると、また妙な反応を検知した。 「……あれ以外のクロスゲートだと?」 正確に言うと『クロスゲートが過去に出現した』反応と、『これから出現が予測される反応』である。 過去に出現した反応は、この世界においては数百年、数千年に渡ってポツリポツリと確認が出来る。先程の大規模な反応と、自分が召喚された時のものを除くと、一番最近の反応は一ヶ月ほど前。先程に比べれば小さいが、それなりに大規模なものだ。 それ以降は約33年ほど前、約60年前……と、かなりの頻度でクロスゲートが発生している。 (……やはり、この世界は次元交錯線が不安定なのか?) 小規模な反応については、今自分がいる地点から東の方にやたらと多い。 (……まあ、そういう地点は地球などにもあったのだから、別に不思議ではないが) バミューダ海域、カリフォルニア沖、小笠原沖、チベット上空、アルジェリア上空。これら五つの地点は、地球でも割と有名な不思議スポットであるが、次元境界線が極度に乱れているのが原因と目されている。 つまり、これらの海域なり空域なりに接近して『消失』してしまったものは、別の世界に飛ばされた可能性がかなり高いのだ。 また、宇宙のとあるポイントには空間が非常に不安定なウルトラゾーンと呼ばれる空間があり、そこには宇宙中の怨念やら亡霊やらが集まる『怪獣墓場』という異次元空間にも似たものが存在するのだとか。 自分がガイアセイバーズとの最終決戦のために用意した異空間も、この怪獣墓場に近い特性があるらしい。……他でもないハヤタがそう言っていたのだから、まあ間違いないだろう。 閑話休題。 ともかく、そのような特殊地点と『東にある地帯』が同じものだ、と考えると、取りあえずではあるが納得はいく。 「……むう」 『これから出現が予測される反応』は、やはり東からのものが多いが、大規模なクロスゲート反応は一つだけだ。 先程の反応があったのは、南に1100キロ~1200キロほどだろうか。正確な距離の算出には時間がかかるから分からないが、特に次元交錯線が不安定である様子も無い。 一ヶ月ほど前の反応は、そこから更に南に進んだ地点から検出されている。 『未来の反応』は、西の―――上空から、である。一週間ほど後に出現するようだが、時空間の転移には特に場所を選ばないから、そういうこともあるだろう。 ―――この時、もしユーゼスにハルケギニアの地理についての知識があったとならば、『先程の反応』はガリア王国、『一ヶ月前の反応』はロマリア皇国、『未来の反応』はアルビオン王国からのものであると気付いていたのだが、それはあくまで仮定の話であり、また知っていた所で対処のしようもなかっただろう。 (……まあ、私が消えるなら、それも良いかも知れないな……) そもそも自分はガイアセイバーズとの戦いで敗北し、消滅していたはずなのだ。 それが何の因果か、こうして別の世界に存在している。 その事実だけでも望外の幸運なのだから、これ以上の高望みは止めるべきかも知れない。 ……もし自分が消されることがあるのなら、その時は潔く受け入れるべきか。 では、ひとまず転移反応のことは忘れて、また魔法について調べよう―――と、ユーゼスは再び本の内容に没頭するのだった。 赤い世界。 生物の残骸―――化石のような大地の上で、その戦いは行われていた。 しかし、戦いは既に佳境。 今まさに、決着はつこうとしている。 「ぐぅぅうううぅうううう……!!」 『彼』は、人間ではない。 その姿は異形。 骨と殻だけで構成されているような赤い身体に、ところどころに生えた黄色い角のようなモノ。 これを『人間』と称する者はいないだろう。 『彼』は生命を監視するために、ある『思念体』によって生み出された人造生命体である。否、正確に言えばその人造生命体が作り出した端末のようなモノだった。 この人造生命体の役目は『世界の監視』である。世界そのものにとって有害であったり、世界そのものを脅かすような存在が現れた場合、または『世界そのもの』が何らかの変調をきたした場合、これに対処し、『害悪』の排除や『変調』の修正などを行う。 ―――今となっては原因はもう分からないが、その人造生命体の内の一体は、何かの手違いで本来の世界とは違う世界に漂着してしまう。 漂着した人造生命体は、元の世界へと帰るべく、クロスゲートを何度も何度も開いた。 しかし、それは自分がいるべきだった世界と、自分が漂着してしまった世界とも異なる世界同士を、繋げるだけの結果に終わる。 ……そして、その『繋げた世界』の住人たちが、自分のことを『害悪』と判断し、この自分のいる世界に乗り込んできた。 人造生命体は『彼』という抗体を作り出して対抗しようとしたが―――結果は『彼』の敗北で終わろうとしていた。 「この一撃で決める……!」 黒いハットと黒いコートを身にまとった男が、ボロボロになった『彼』の懐に飛び込んでくる。 「……認めぬ……!」 『彼』は傷付いた身体を急速に再生させ、男を迎え撃とうとした。 「世界は修正される……一つになるのだ……!」 それが『彼』の役目。『彼』の使命。『彼』の存在意義。 だが。 「ここが俺の世界だ……! ……それでいいのさ!!」 男はその彼の成すべきことを否定し、その手に持つ銃をこちらに向けた。 「―――アディオス!!」 ドゴォオオオオオオオオオオオ!!! 放たれる膨大なエネルギー。 それは再生しかけていた『彼』の身体に、致命傷を与える。 「我は……ぬおおおおおおおおっ!!」 『彼』の身体が崩れていく。 もはや、自力の再生は適わない。 「おおお……なぜ……だ……! この世界を……世界の……この我が……なぜ……なぜ……敗れる……」 『彼』は、自身をここまで痛めつけた存在へと問いかける。 「俺たちを甘く見た……おまえの傲慢だ」 二本の刀とショットガンを連結させた武器、そして金色の拳銃を持つ、頭に傷のある赤いジャケットを着込んだ男が言い放つ。 「ちゅうか、ぬしは最初から負け犬ムードだったってことじゃ!」 こちらは茶化すような口調の、錫杖と銀色の銃を武器とし強力な術を行使する狐めいた少女。 「これでは……戻れない……静寂の……世界へ……帰る……ことが……」 ―――戻って、自分の使命を果たすことが出来ない。 「私たちも、元の世界へ帰りたい。ですが、そのために犠牲になるものがあってはならない。……私は、そう思います」 美しい青い髪と、赤い瞳―――時折青く変化するが―――を持つ、その外見に似合わぬ強大な力を秘めたアンドロイドが、痛ましい様子で告げる。 「私も艦長も、異邦人だった。だが、今の『故郷』……守るべき場所は、決まっている……!」 『故郷』を守ると言い切る、先程のモノと同じく女性型であるが全身が兵装のカタマリである戦闘用アンドロイド。 「我は……創造主たりうる……存在……それが……それを……なぜ……」 ―――この者たちが生きる世界を創造したのは自分であるのに……なぜ、この者たちは自分を滅ぼすのか? 「……このエンドレス・フロンティアを結果的に形作ったのは……確かにアインストだったかも知れないさ」 やれやれ、という言葉をそのまま態度に表したような、自分にトドメを刺した男。 「だけど、そこで生きる私たちは、あなたの手駒なんかじゃないんです……!」 自分の身長ほどもある巨大な大剣を振るう黒髪の女性が、強く言う。 「それを思い違いしたのが……そちの不覚であるぞ」 頭に角を生やした、巨大機動兵器を操る少女が諭すように言葉を送る。 そして。 「帰りたいなら、一人で帰りな……どこか、俺たちの知らない所へな!」 「ォ、ォオオオオオオオオオオオオオオ………………!!!」 もはや、意識を保つことも難しい。 壊れていく赤い世界。 『彼』は無念を抱きながら、その存在を加速度的に消失させていき――― ―――消える寸前、最後の力を振り絞って、目の前に現れたゲートへと飛び込んだ。 転移した先は、どこかの建築物。 ステンドグラス越しの陽光が、自分を照らしている。 ……失いかけている視覚は、目の前に重厚なローブを着込んだ金髪の男を捉えている。 「……お、お下がりください、聖下!!」 「何を言うのです、これは―――いえ、『彼』は私がたった今、『サモン・サーヴァント』で呼び出したのですよ? 彼は私の呼びかけに応えてくれたのです。ならば私が拒絶して何としますか」 禍々しい『彼』の外見に臆することなく、目の前の男は自分に歩み寄ってくる。 「かなり傷付いていますね……。……誰か、早急に水のメイジをここに! 彼を治癒するのです!!」 「し、しかし……」 「……このままでは、この私、ロマリア教皇聖エイジス三十二世の名の下に命を発さねばならなくなるのですが」 「しょ、承知いたしましたぁっ!!」 ローブを着込んだ男のそばで、あからさまに『彼』を警戒していた聖堂騎士は、渋々さと慌ただしさを合わせた様子で駆けていく。 「……さて」 男は更に自分に近寄り、ゆったりと言葉を紡いだ。 「まずは私から名乗るのが礼儀ですね。……私の名はヴィットーリオ・セレヴァレ。これからあなたの主になるものです」 「ぉ…………ぁ…………」 「ああ、無理に喋らなくとも構いません。まずは傷を癒すことに専念していただかなくては。 ……とは言え、契約は先に済ませておきましょうか」 そしてヴィットーリオと名乗った男は、躊躇もせずに『彼』へと口付けした。 途端、『彼』の身体に熱が走り、何かが刻まれていく。 それと同時に、先程の戦闘で失われたはずの右腕が、いきなり再生を始めた。 「ァァァアアアアアアアアア……」 その様子を見て、満足そうにヴィットーリオは微笑む。 「今はまだ、その時期ではありません……。 ……しかし逆に言えば、あなたの傷が完全に癒え、備えを万全にした時こそが、その時……」 その未来予想図を胸に、『彼』―――ヴァールシャイン・リヒカイトを見つめながら。 「―――共に、異教徒たるエルフを滅ぼすのです」 ある意味でハルケギニアの頂点に君臨する男は、敵対する勢力の殲滅を宣言した。 ―――――時に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、ユーゼス・ゴッツォを召喚する一ヶ月ほど前のことである。 「…………!!」 ガリア国王、ジョゼフ一世は驚愕している。 自分が『虚無』の系統である、と八割がた確信はしていた。 ガリアに伝わる『始祖の香炉』と『土のルビー』、そして様々な手を尽くして手に入れた『始祖のオルゴール』。 それらを使って『爆発』や『加速』の虚無の魔法を習得し、そう言えば使い魔は召喚してなかった、と思い出したのがつい先日のこと。 あらゆる武器を操る『ガンダールヴ』、あらゆる獣と心を通わせる『ヴィンダールヴ』、あらゆるマジックアイテムを操る『ミョズニトニルン』、そして記す事さえ憚られる存在……。 出来れば『憚られる存在』が出て来てくれれば面白い、と考えつつも『サモン・サーヴァント』を行ってみた。 まず、通常の鏡のようなゲートが出現する。 伝承によると人間が召喚されるらしいが、さてどんな奴が……などと考えていると。 いきなりそのゲートから赤黒い稲妻が放出され、まるで無理矢理にこじ開けるかのごとくゲートが拡大される。 ジョゼフが目を見張っていると、その稲妻の中心に、同じ色の強い閃光が走った。 やがて周囲の空間が赤く染まり、もはや『鏡』ではなく『黒い大穴』と表現するべきゲートから、『それ』はやって来た。 「お、おお…………!!」 その巨体も十分に圧倒的だが、何よりもその『存在感』が物凄い。 白い鎧のような身体はかなりボロボロの状態だが、それでもその絶大なる威厳と、邪悪さを兼ね備えた威容は健在だ。 そして、その存在は言葉を紡ぐ。 「……古の賢者たちは云った……『闇在れ』と……」 「………!!」 声を聞くだけで、身体どころか魂の底から震え上がる感覚がする。 ……それと同時に、ジョゼフはこの存在と『言葉が通じる』ことに、ある程度の知性があることを分析していた。 話に聞く『水の精霊』と同類の存在なのやも知れぬ、などと考えながら、更にその存在の言葉を聞くべく、耳を傾ける。 「我らは暗邪眼にて世界を看破し、開明脳にて英知を集積す……。我らは闇黒の叡智……至高の想念集積体……。 我らの名は……ダークブレイン」 「おお、ダークブレインと言うのだな、お前は!」 感激すら覚えて、ジョゼフはその存在―――ダークブレインとコミュニケーションを図った。 「お前は……」 「ん? ああ、俺か? そうか、そちらが名乗ったのに、俺が名乗らぬのは道義に反するな! 俺の名はジョゼフ。このガリアの王などをやっている!」 全く物怖じも気負いもせずにダークブレインと話すジョゼフ。 「……お前が、我らとこの世界を繋げるゲートを開いたのか?」 「どうやらそうらしい。しかし驚いたぞ! まさかこんなモノがやって来るとは思わなかった!」 「……この世界は次元境界線が極度に不安定な状態にある」 「ジゲンキョウカイセン? なんだ、それは?」 「異なる世界同士を隔てる壁だ。また、この世界にはゲートを開くために必要な因子が揃いつつある……」 ジョゼフはふむ、と大きく頷くと、ダークブレインの言葉を噛み締めるようにして会話を続ける。 「要するに、部屋と部屋とを繋ぐ壁が薄く、その壁に穴を開ける道具があったのだな? 面白い、面白いぞ! ……ところで、お前はなぜそれほど傷付いている?」 「我らに楯突く愚か者との戦いの結果だ。 ほぼ相打ちに近い状態だったが、『奴』には深手を負わせたことは確実だった。 ……しかし我らの損傷も重く、逃亡する『奴』を追うことは出来なかった。そこにお前がゲートを開いた」 「ふむ? では俺はお前の邪魔をしたことになるのか?」 「この状態では『奴』を追うことは出来ない。治癒に専念すると結論づけていたのだから、特に問題はない」 ジョゼフは、ほうほう、としきりに感心する。 「で、お前は何のためにその『敵』とやらと戦っていたのだ?」 「我らは知的生命体の痛み、苦しみ、悲しみ、憎しみ、蔑み、妬み、怒りを糧とし……。 夢、希望、心、勇気、優しさ、善、想い、信頼、絆、友情、願い、愛を滅ぼす。 そして……闇黒の秩序を作り上げ、我らがその頂点に君臨するのだ」 それを聞いたジョゼフの瞳が、くわ、と見開かれる。 「おお……おお!! それらは全てこの俺が失ったものだ!! お前もそれを求めるか!! ハハハハ、何だ、気が合うな!!」 ……既にジョゼフは、この闇黒の叡智に対して親愛の情すら抱いていた。 「………お前も我らの糧となり、我が開明脳と同化せよ」 「む、お前と一つになるのか? ……ふむ、それも面白そうだがな、出来ればそれは後回しにしてもらいたい」 「……何が望みだ?」 「お前は『痛み、苦しみ、悲しみ、憎しみ、蔑み、妬み、怒りを糧とする』のだろう? つまり、傷を癒すためにはそれらの感情が必要なわけだ」 「……………」 「どうせなら、お前にそれらを与えてやると言っているのだ。そもそも、俺一人の感情などたかが知れている。……第一、俺はそのような感情を亡くしてしまった。 ならば、この世界全体から負の想念を集めた方が効率が良いだろう」 「………お前はこの世界の破滅を望むか」 「その通りだ!」 ダークブレインの問いかけに、ジョゼフは即答した。 「俺の心はな、弟を―――シャルルを失った時に、その色を失ってしまった。中身がからっぽになってしまった。ほとんど動かなくなってしまった。 ならば大きな刺激を与えればまた満たされることもあるかと思い、試しに『レコン・キスタ』という連中を使ってアルビオンに内乱を起こしてみたが、これが大して面白くもない」 「……………」 「ではその対象をこの世界そのものに拡大すれば―――と思い至って、手始めに使い魔を召喚しようとしたら、お前が現れたのだ!」 興奮した様子でジョゼフはまくし立てる。 「率直に言うと、俺はお前の存在に感動した。もう震えぬと思っていた心がな、震えたのだ。 ………そしてどうせなら、お前がこの世界で成すことを見てみたいと思っている」 「……良いだろう、ジョゼフ。お前の望みを叶える。そして、この世界のお前以外の存在を滅ぼし尽くしたならば……」 「そうだな、その時は最後に、この俺をお前の開明脳とやらに食わせるが良い!! ハハハハハハ!!」 ダークブレインはその言葉を聞くと、その身体を青白い光に包み始めた。 「ん、どうした?」 「この姿では世界に対しての影響力が強すぎる。また、我らの存在を感知する者もいるようだ」 「ほう、そんな奴までいるのか」 「傷を癒す目的もあるため、姿を変える」 バチン! 稲妻が走る。 思わずジョゼフが目を瞑り、再びその目を開くと、そこには黒いローブに身を包んだ白髪白髭の老人がいた。 「……よし、これで世界への影響は最小限に抑えられるはずじゃ」 「ほぉ……」 外見が変わったことにも驚いたが、何よりその雰囲気、人格に至るまで変化していることに驚く。 ……またそれと並行して、ダークブレインが自分のことを『我ら』と複数形で表現するのは複数の人格、あるいは多数の思念があの存在に同居しているためか……と、ジョゼフは推測していた。 「よし、それではまず色々とお前の話を聞かせてもらおう! 俺の知らない、ここ以外の世界のことを教えてくれ!」 「ま、いいじゃろ。ワシもこの世界の情報は欲しいしの」 二人は、まるで長年からの友人であるかのように連れ立って歩いていく。 ―――――時に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、ユーゼス・ゴッツォを召喚した、その日の夜のことである。 浮遊大陸アルビオン、サウスゴータ地方にある森。 その中にある小さな村は、その少ない人口のほとんどが大混乱に見舞われていた。 「うわぁあああ~!!」 「怖いよ、テファ姉ちゃん~!!」 「バカ、俺たちがテファ姉ちゃんを守るんだよ!」 パニックに陥る子供たち。そんな子供たちの保護者であるハーフエルフの少女、ティファニアは必死に自分を奮い立たせていた。 (わ、わたしが呼び出したんだから、わたしが何とかしないと……!) 一応魔法が使えるんだから、試しに『サモン・サーヴァント』でもやってみたらどうだい―――と姉代わりの女性に言われ、せっかくだからその女性がいない内に使い魔を召喚して驚かせてやろう、失敗しても別に困るわけでも………などと考えたのが間違いだった。 姉代わりの女性に教えてもらった呪文を唱えてみると、やたらと大きい―――40メイルほどのゲートが開き、そこから現れたのは――― 「ゴーレム……!? じゃなくて、ガーゴイル!?」 どちらなのかは分からないが、とにかく少なく見積もって30メイルは超えている。 青い鎧をまとい、金色の輪を背負ち、空を飛ぶ人型のモノ。 ……自分は一体、何を呼び出してしまったのだろうか? しかもどうにかしようにも、自分に出来るのは、特定の相手の記憶を消去することだけ。 はっきり言って、直接的な戦闘行為においては何の役にも立たない。 ……せめて、姉代わりの女性がいる時にやるべきだったと後悔する。 だが、それでも。 (それでも、この子たちだけは……!) 少なくとも、逃げさせる時間程度は稼がなくてはならない。 囮となってアレの目を引き付けなければ―――などと、ティファニアが悲壮な決意を固めつつあったその時。 「じ、地面におりた……!」 子供たちの一人が、青い鎧の巨人の挙動を説明する。 もしかしたらこちらに近付いて、自分たちを捕まえるつもりなのではないか……と、ティファニアが子供たちに逃げるように叫ぼうとした、その時。 ガシャンッ 「?」 腰の部分のあたりが突然に開き、そこから人影が現れる。 性別は男。紫がかった髪の色、長身痩躯、服装は白衣を着込んでいる。年は―――20歳過ぎほどだろうか? 肩に青い鳥を乗せているが……。 男は地面に降り立つと、自分たちに向かってゆっくりと歩いてくる。 「……申し訳ありません。どうやら怖がらせてしまったようですね」 「え、あの、えっと」 「ほう…。エルフ、というものでしょうか。地上のファンタジー小説などではお馴染みの存在ですが、ふむ」 「っ!」 バッ、と男に対して身構えるティファニア。 自分の母の受けた仕打ちが脳裏をよぎり、この男の記憶を消そうか、などと考えるが、 「御主人様、いきなり登場したワケの分からない人が、思わせぶりなセリフを言ったりしても警戒されるだけですよ」 「……それもそうですか」 肩に乗った青い鳥が、早口で男に忠告を送った。 (……メイジ?) あの青い巨人がゴーレムかガーゴイルだとして、この青い鳥が使い魔だとすると、この男はやはりメイジなのだろうか。 ティファニアが子供たちを庇いつつ、男の正体を測りかねていると、 「では、先に名乗らせていただきましょう」 男が自己紹介を始める。 「……私の名前はシュウ・シラカワ。こちらは私の使い魔でチカと言います」 ―――――時に、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、ユーゼス・ゴッツォを召喚した、その一週間ほど後のことである。 前ページ次ページラスボスだった使い魔
https://w.atwiki.jp/rasuboss/
こんにちはww ニンテンドーラスボス研究室にようこそ ここではニンテンドーに登場したラストボス(クッパやデデデ等) 又はラスボスのような存在(バツガルフやザント等)について研究するところです。 知らないラスボスを調べるための良い資料室として使って頂ければ光栄ですw
https://w.atwiki.jp/uetyao/
おかふhp @うえちゃお ここきてね2ch掲示板レンタルしたんで↓↓ http //www1.atchs.jp/uetyao/ (´・ω・`)モキュ?(´・ω・`)モキュ?も(´・ω・`)モキュ?も #videohttp //www.youtube.com/watch?v=YzsiAUP9iyE